株式投資型クラウドファンディングとは

投資型クラウドファンディングの一種である株式投資型クラウドファンディング

クラウドファンディングといっても、企画者と支援者との関係によって「寄付型」、「投資型」、「購入型」に分けられます。
各タイプの内容は以下になります。

  • 寄付型:
    支援者には見返りの全くない、企画者に対する一方的な寄付です。
  • 投資型:
    企画者の事業で得た利益の中から、支援者は配当を得られます。
  • 購入型:
    支援者には企画者から物品等の提供があります。

そして、投資型クラウドファンディングはさらに「ファンド型」、「融資型(貸付型)」、「株式投資型」の3種類に分けられます。

  • ファンド型:
    個人の資金をファンドとして集約し、そこから企業に投資します。
  • 融資型:
    企業に融資する形になり、元本に利息を付けて返済してもらいます。
  • 株式投資型:
    企画者(企業)の株を購入することで、企業の株主になります。

投資型クラウドファンディングの中で、最近話題に上っているのが、「株式投資型クラウドファンディング」です。2015年に金融商品取引法が改正されたことで、日本でも株式投資型クラウドファンディングが運営できるようになりました。

株式投資型クラウドファンディングは簡単に言うと、資金の必要なベンチャー企業が「非上場株式」を発行して資金調達を図る方法のことです。従来、ベンチャー企業に投資する機会はほとんどなく、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルがその役割を担っていました。

しかし、株式投資型クラウドファンディングが可能になったことで、個人でも少額からベンチャー企業に投資ができるようになりました。

株式投資型クラウドファンディングのリターン

株式投資型クラウドファンディングの場合は、「配当」というリターンをもらえる可能性があります。あくまでも可能性であり、必ず配当が得られるということではありません。クラウドファンディングで資金を集めるベンチャー企業に対して、いきなり配当を求めるのは非現実的とも言えます。

株式投資型クラウドファンディングのメリット

株式投資型クラウドファンディングのメリットとしては、以下が挙げられます

エンジェル税制の適用

エンジェル税制とは、ベンチャー企業へ投資を行った投資家に対して、税制上の優遇措置の採られる制度のことです。この制度自体が、ベンチャー企業への投資を促進するために設けられたものです。エンジェル税制が適用されると以下の優遇を受けられます。

1)以下のどちらかを選択可能

  • A. 設立3年未満の企業の場合:
    「対象企業への投資額-2,000円」をその年の総所得金額から控除
    (控除対象となる投資額の上限は、総所得金額×40%と1,000万円のいずれか低い方)
  • B.設立10年未満の企業の場合:
    「対象企業への投資額全額」をその年の他の株式譲渡益から控除
    (控除対象となる投資額の上限なし)

設立3年以上の企業に投資した場合はBしか選ぶことができませんが、設立3年未満の企業に投資した場合は、AとBの内有利な方を選択できます。

2)譲渡損失額の繰越控除
投資した企業の株式を売却したことで損失が出た場合、売却年及び翌年以降3年間に渡って、株式譲渡益から繰越控除することが可能です。

株式取引で損失が出た場合の3年間の繰越控除は、従来も上場株式においては可能でした。ただ、非上場株式においては、エンジェル税制でしか適用されません。

なお、エンジェル税制の適用対象となるベンチャー企業は以下の条件を満たしていることが必要です。

  • 起業してまもない。
  • 研究開発に対して十分な資金を投資している。
  • 資本金や従業員が少ない。
  • 特定の親会社などを持たない。

IPO(上場)やM&Aにおけるリターン

投資先企業が上場やM&A行うと、大きなリターンを得られる可能性があります。一般的に、非上場企業が上場すると、株式の価格が急上昇して額面の何倍にもなることが珍しくありません。また、上場されると、任意の時に株式を売却して換金できるようになります。

そして、M&Aによる高価格での株式の引取りも起こり得ます。投資先企業が優れた技術やサービスなどを開発した場合、その特異性や成長性を見込んで大企業が買収を図ることがあります。

M&Aによって完全子会社化にするには、発行済み株式の100%を取得する必要があります。買収金額はベンチャー企業の価値や買収企業の状態、市場環境などにもよりますが、株式価格の数倍から数十倍で売却できることもあります。

従って、株式投資型クラウドファンディングに参加する時は、相手の企業のことをよく調べておくことが得策です。

株主としての意識

株式投資型クラウドファンディングは企業の株主になるため、自分の会社という意識を持てます。単なる投資ということではなく、企業の成長を楽しむという夢を持てます。

株式投資型クラウドファンディングのデメリット

一方、株式投資型クラウドファンディングのデメリットには以下などがあります。

自由な換金が不可

上場株式は「公開株式」とも呼ばれ、証券取引所で取引されているため、自由に売買ができます。つまり、いつでも好きな時に株式を換金できます。一方、非上場株式は売買するパイプが無いことから「非公開株式」とも呼ばれ、簡単には換金できません。上場株式と非上場株式の違いは、上場株式の特徴の正反対が非上場株式ということです。

上場株式の特徴(非上場株式の特徴)

  • 一般に公開されている。(公開されていない)
  • 誰でも自由に購入できる。(購入できない)
  • 任意の日に売却できる。(売却できない)

また、非上場株式には譲渡制限の設けられているのが一般的です。これは、株式を自由に売買されると、会社の事業に制約を受ける可能性があるからです。ベンチャー企業は規模が小さく、株式の絶対数も少ないため、少量株の株主でも事業の運営を左右する危険性があります。

譲渡制限があると、株式を売却するのに取締役会や株主総会による承認を得る必要があり、また必ず承認されるわけでもありません。承認されなければ、譲渡することができなくなります。

このように、非上場株式の売却は簡単ではないため、株式投資型クラウドファンディングは短期的な投資には適しません。

投資額の制限

株式投資型クラウドファンディングには、資金調達をする側(企業)と資金提供する側の双方に金額の制限が設けられています。

  • 資金調達をする側の制限:
    1つの企業が資金調達をできるのは「1年間に1億円未満」です。
  • 資金提供をする側の制限:
    1つの企業が発行する株式を持てるのは、「1年間に50万円以下」です。どんなに将来性を感じた企業であったとしても、1年間に50万円までしか投資できません。

資金の消失の可能性

投資先企業が思うように事業を伸ばせないことがあります。かといって、当該株式を売却できるパイプはありません。つまり、投資資金を失う可能性があるということです。株式投資型クラウドファンディングは典型的なハイリスク・ハイリターンのクラウドファンディングです。

少ない投資の判断材料

上場企業には開示義務があり、事業内容や営業状況、財務状態などを記す「有価証券報告書」が公表されています。ところが、ベンチャー企業の場合は、事業の実態を把握できる資料がほとんどありません。非上場企業に資料の少ない理由は、上場企業と違って作成義務の無いことが挙げられます。

従って、株式投資型クラウドファンディングを行う場合は、クラウドファンディング業者が公開している情報を下に、購入判断をしなければなりません。